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2006年4月16日 (日)

君主の資質

 民主党の新代表が小沢一郎氏に決定した。以前のエントリでは、前原氏が代表から降りることを嘆くあまり、民主党の前途は見えないと述べたが、私はそれでも民主党に頑張って欲しいとの思いを捨ててはいない。なぜなら、民主党が政権交代政党として果たす役割はまだまだ大きく、与党と野党の緊張関係が持続しなければ政治はすぐに腐敗に向かっていってしまうからである。私は基本的には自民党を支持するが、掲げる理念としては民主党の政権交代構想をより一層強く支持している。それにもかかわらず、過去の選挙で自民党に支持したいと思ったのは、結局のところ判断の決め手となるのは政策だからである。民主党には支持するに足る政党に早く成長して欲しいと思う次第である。

 さて、小沢氏に決定した新代表だが、早くも巷では様々な言説が聞かれる。その中で際だっているのは、小沢氏の「政治屋」というイメージに関したものである。ここで言う「政治屋」とは、政治的手腕に長け、目的のためには手段を選ばないような政治家像を指しているものだと思われる。確かに、政治的手腕に長けた政治家は攻撃的なイメージがつきまとい、政治家に穏健的なものを期待する市民にとっては、苦手な部類に入るだろう。だが、政治家というものは本当にそのような清新なイメージだけでやっていける職業なのだろうか。政治家像というものについては、政治学の古典として有名な「君主論」が私たちに大きな示唆を与えてくれる。

 「君主論」は政治における権謀術数を賞賛したものとして、しばしば批判されがちであるが、著者のマキャベリが目指した理想とは、そのような陳腐なものではない。彼は、数多の歴史の事例から引き出して、政治において何かを達成することがとても難しいことを主張した。政治において善悪が簡単に判断できる問題は少なく、悪を避けようとすれば、何をも為すことができないからである。そして、その中で何かを成し遂げるには、大きな目的のために小さな犠牲も厭わない、英雄的な精神を持った君主を待ち望んだのである。

 ここからあるべき政治家像を汲み取るならば、それは幾多の政治的困難を乗り切る力と統率を持った政治家でなければならないということになる。奇しくも、現代の理想的政治家像に則った宰相こそ、現在の小泉首相であった。彼は、できないと言われた自民党の悪しき癒着構造の旧弊を打破した。この点において小泉首相は政治に必要な実行力を持っていたと言える。そして今、野党第一党に立った小沢氏は、この時代の傑物である小泉首相に対抗できるのだろうか。

 政治に必要な力と統率については、小沢氏は小泉首相に勝るとも劣らない力を示すだろう。だが、小泉首相は政治に必要な統率を持つと共に、清新なイメージも持っていた。それは一言には言い表せないが、若さや外見、旧弊打破のスタンスなどの諸要素から出来上がったものであろう。残念ながら、小沢氏はこの清新なイメージを持っていない。しかし、小泉首相の任期は今年の9月までである。「ポスト小泉」の面々が小泉カラーからの脱却を図るならば、小沢氏にも勝機が見えてくるかもしれない。

 ともあれ、小沢氏は目的に対する強い実行力を持った政治家である。彼が提示する政策が国民の望みと一致するならば、彼は小泉首相に勝るとも劣らない功績を残すだろう。小沢氏が「小泉後」をにらんだ効果的な政策を打ち出してくれることを期待したい。

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コメント

 「我が魂よりも我が祖国を愛する」。
 ニコロ・マキアヴェっリの臨終の言葉とされるものですけれども、この言葉こそ、マキアヴェッリが何故、「権謀術数」を説いたのかということの理由を示しています。「祖国のために」。このことが抜け落ちた「権謀術数」には、余り意味はないのだとおもいます。

投稿: 雪斎 | 2006年4月28日 (金) 04時11分

コメントありがとうございます。
マキアヴェリについて造詣の深い先生から説明いただくのは、ありがたいことです。
信念を持って行う権力政治でなければならない。この言葉は小沢氏にどれほど当てはまるものでありましょうか。
自分が権力の座に就きたいだけなのではないかとも噂される小沢氏ですが、この段階に至って、政策方針を転換させることは、それだけ国家に必要な政策を臨機応変に練っているとも言えるかも知れません。

ともあれ、次の選挙では二大政党で「国家はどうあるべきか」という高い視点に立ったグランドストラテジーについて熱い議論をかわしてもらいたいものです。
私は選挙権を持っていませんから、場外から声援(ただの野次だという噂も)を送ることにいたします。(笑

投稿: 熊助 | 2006年4月30日 (日) 00時08分

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