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2006年3月12日 (日)

人と接する能力

 今日は近所の焼き鳥屋に行って夕食を食べた。その焼き鳥屋は数ヶ月前に一度行ったことがあって、値段がとても安かったので(どうやら全国的にチェーン展開している店らしい)また行ったのだが、今日は前回よりも非常に楽しく食べさせていただいた。何が楽しかったかって、店員の馬鹿さ加減が、である。

 店はそこそこの繁盛具合で、店員は忙しそうに動き回っていた。その中で新人らしき初々しさの若い店員の兄ちゃんが私たちのテーブルの担当らしかった。その兄ちゃんは、私の母親が「おしぼり持ってきて」だの「お茶急須ごと持ってきて」だの言う、大阪のオバちゃん臭い強引な注文にも懸命に応対してくれていた。それでも手際の悪さに母は苦笑いしていたが、懸命さに好感が持てる兄ちゃんだった。私が注文を追加したときなどは、何を頑張ろうと思ったのか、「そちらの方はチューハイなどいかがでしょうか」と私に聞いてきていた。私は未成年なんだけどなぁと苦笑いしながら、でも中央公論を読みふけってる未成年なんて何処にいるんだと自嘲してしまう。店の入り口には「未成年に酒はお売りしておりません」としっかり書いてあったのだが、店としては飲んでくれるなら未成年でも売りたいのだろう。最近では「ウチの店では未成年らしき客には年齢確認をしています」と自慢げに語る居酒屋チェーンの社長もいるが、どうせ「ガタイが良くて未成年にはとても見えなかった」とか言い逃れの口実を用意しているのがオチである。私の場合は「オッサン臭いので未成年には見えなかった」と言われるのだろうか。それならば、こちらにも甚だ迷惑な話である。
 さて、だんだん私たちのお腹もふくれてきた頃、店員が注文を間違えだすようになった。注文した数以上の串カツが届いて、普通なら「こんなもの注文してないよ」と文句を付けるところなのだが、なんと間違えて届けられた串カツの分が伝票につけられていない。これは儲かったシメシメなんて思いながら、食べていたのだった。さらにもう一つ驚いたことは、イカの一夜干しを注文しようとしたら「イカの一夜干しですか?今焼いております」との返事。注文していないのに焼いているとは、この店員は予知能力でもあるのかと(笑)。別のテーブルの注文と勘違いして言ったんだろうなと思っていると、帰り際にイカの一夜干しが届く。間違えてるとは言え、絶妙なまでのタイミングの良さ。私の家族のテーブルに持ってきたら何でも食べてくれると思ってるんじゃないだろうかと怪しみながら、愉快な店員のいる店を後にした。

 私が気になったのは、店員の馬鹿さ加減に抱腹絶倒していたときに親父が何気なく呟いた一言である。「よくできる店員はまともなところに就職して、こんな情けない奴はずっとアルバイトなんやろなぁ」。この一言を聞いて、私はニート問題に関するある論文を思い出した。去年の中央公論4月号に掲載されていた「『対人能力格差』がニートを生む」と題した論文である。書き手はニート問題の主要な論客である本田由紀氏。世間では格差社会とはヒルズ族みたいな億万長者と、ニートみたいな無産市民との学歴から生じる月とスッポンのような格差が語られがちであるが、実際にはそうでないと思う。同じアルバイトから始めた者同士の中でも、コミュニケーション(接客)能力に優れている者はその後の待遇が変わってくるだろうし、そうでない者はずっとアルバイトのまま留まらざるを得ない。こうした”対人能力の格差”はあらゆる部分で人々の間に格差を作っている。これが、より身近な格差社会の現実ではないかと思う。

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