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2005年11月16日 (水)

罠に乗るべきか乗らざるべきか

 中国との外交交渉がほぼ断たれてから久しくなる。これから一層の台頭が見込まれ、更にアジアの隣国としても日本にとって無視できない相手となるであろう中国政府だが、中国の外交を見ているとその巧妙さに舌を巻くばかりだ。

 中国の李肇星外相は15日、「ドイツの指導者がヒトラーやナチス(の追悼施設)を参拝したら欧州の人々はどう思うだろうか」との表現で、小泉純一郎首相の靖国神社参拝を非難した。

 これだけを見ればいつもの靖国批判の論調を強めただけに変わらないと感じる。一般的に右派思想を持つ人々は、ここでヒトラーと日本のA分類戦犯との相違を論拠に批判したがるかも知れないが、問題はそこではない。この外相発言の前日に中国の国連大使が国連本部で次のことを語っている。

 安全保障理事会の拡大問題に関し、改選可能で非常任理事国(任期2年)より任期の長い「準常任理事国」を新設、日本がそれを目指すなら「打開策になり得る」と述べ、容認可能との立場を初めて示した。

 つまりは国連常任理事国入りに関して譲歩の姿勢を見せる一方で、靖国問題では日本に妥協しろと言ってきているわけである。この巧妙な交換条件に果たして日本は乗るべきであろうか。もちろん、中国が常任理事国入りに関して譲歩してみせた案も、拒否権などの肝心な権限は除外されていて、無条件に賛成と言える案ではない。だが、既にG4の安保理拡大決議案が廃案となっている今、この譲歩の案は決して悪くない条件だとも思えるのである。

 現在日本としては、なんとか中国に対する和解の局面を見つけて、外交交渉を復活させたい。中国は次の北京五輪で先進文明諸国の仲間入りとなるか否かのターニングポイントを迎えているからである。そのタイミングに彼の国が躍進を遂げるとしたら、日本は今ここでせめて国交回復くらいはしておかないと、国際社会から置いてけぼりを食らってしまう。アメリカは日本と同様に中国に対しても一定の間隔を置きながら融和政策を推し進めているからだ。

 だが、日本政府は今回のこの巧妙な中国の交換条件を読み切れているのだろうか。日本が既に小泉政権の元で靖国に関して頑なな態度を取ってしまって、現政権下では中国に対する態度を軟化させる余地のないことはよく分かっている。それでもしかし、中国側も日本との国交回復を(面目が保たれた状態で)成し遂げたいとする思惑を読み取る努力は日本の外交筋にとって必要不可欠であると思う。

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