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2005年11月20日 (日)

問題再考-胡錦濤体制で何が変わったか・中編

 昨日の日記では、胡錦濤体制成立当初は中国の対日政策の軟化に期待がもたれていたと書いたが、無条件の肯定というわけではない。次のことに気が配られる必要がある。対日政策軟化という予測は、ただ江沢民に比して胡錦濤が経済関係を通した対日友好策を採ることの利益を見いだしていた(実際、主席就任前後には日本との友好関係を示唆する発言も少なからずあった)ことだけに拠った理屈なのであって、実際には軍部の保守路線や民衆の反日感情が大きな障害となって簡単にそのようにさせてはくれないだろう、という含みが随所に見られるのである。

 そしてその含みは後の胡錦濤体制にとって現実の障害となった。それが今年の4月に起こった中国での大規模な反日デモである。「中央公論」6月号では反日デモを受けた特集が組まれ、論者は一様にデモは胡錦濤体制が確立できていないことの現れだと論じた。胡錦濤体制は確かに日本との連携を通じて国際社会での地位を確立することを目指したが、反日教育を受けた中国民衆は依然として日本に対する反感情を持っていたのである。反日教育を施すことと経済交流の上で対日融和を目指すこととは相矛盾している。だが、広大な土地と人民を有する中国にとって、民衆のアイデンティティを呼び覚まし結束を固める手段としての反日教育は放棄しがたいであろう。矛盾する双方が必要であるという点において中国はまだまだ対日融和を加速させる基盤が成立しているとは言えず、対日融和を願ったとしてもそれは遅々として進まないことを運命づけられているのかもしれない。

 胡錦濤体制が目指す対日融和のシナリオを阻害するもう一つの要素は軍部である。今月の「中央公論」の特集では、”未だ軍に振り回される胡錦濤政権”という見出しで胡錦濤が体制基盤を確立できない要素の一つに軍部を挙げている。前国家主席の江沢民は権力の座を胡錦濤に明け渡したが、江沢民を中心とする勢力は軍部を中心にまだ根を張っている。度重なる中国解放軍の日本への領海侵犯のような事件は、これら軍部の小さな暴走だと言えよう。中国は伝統的に国内での勢力争いが日本に対する態度という部分を大きなファクターとして含んでいることがあり、胡錦濤が国内勢力を一手にまとめ上げられない限り、日本に対する軍部の暴走は止まらないのである。台湾有事に関して理性的には中国が軍事介入することの益無きことは承知されているが、国内での勢力争いに端を発する軍部の動向如何では、万が一軍事介入することの可能性は否定しきれないと言える。

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