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2005年6月11日 (土)

三大国が対峙する中央アジアの地政学

 中央アジア情勢がまた新たな進展を見せた。中国が三月に政権崩壊したキルギスに軍を駐留させることを検討していることが明らかになったという。旧ソ連圏で相次ぐ民主主義運動による政権転覆の動きが中国国内に波及するのを事前に阻止するのが目的とみられる。既にキルギスには米軍とロシア軍が駐留しており、中国の駐留が実現すればキルギス国内で三大国が対峙することになる。

 以前のコラムでも書いたとおり、中央アジア旧ソ連圏での最近の民主化の動きは連鎖的に起こり、勢いは国境を越えて周辺諸国に及び、止まるところを知らない。私の見るところ、この民主化運動の連鎖はウズベキスタンで政府が強硬手段に出たことにより、一旦は沈静化するだろうと思っている。しかし短期間で複数の国が一挙に民主化してしまったという事実は、非民主的な国々の恐れるところとなっているのだ。中国は国内にウイグル自治区やチベット自治区などの、過去に軍事力で無理矢理服属させた自治区を持っているため、民主化の動きに敏感になっているのだろう。しかしながら、冷戦時代から軍事大国として君臨してきた米国とロシアの二大国の対峙に軍事新興国である中国が割り込んでいったという事実はとても興味深い。一方で以前から駐留をしていた米国とロシアの思惑は何だろうか。

 米国は9・11テロ以来、「テロとの戦い」をスローガンにテロ撲滅のための強硬手段に出てきた。だがテロ鎮圧と称する米国の動向の軌跡は、その実イスラム過激派との戦いであるように感じられる。外的な軍事圧力ではなく宗教的浸透圧をもって版図を広げるイスラム勢力が次に浸透してくるのは中央アジアである可能性が高い。現に中央アジアで起こった一連の民主化運動のうち、ウズベキスタンの運動はイスラム過激派の煽動によるものということだ。米国にとって「テロを防ぐ」というのは「イスラム勢力の波及を防ぐ」と同義ではないだろうか。
残るはロシアであるが、彼の国は自国の旧領であった地域が民主化によって瓦解していくのを眺めているようにしかできないように思われる。この影響がチェチェン勢力のように波及しないことだけを願っているのではなかろうか。

 三大国が揺れ動く中央アジアの掌握に積極的に乗り出した結果と見られるキルギスの対峙だが、その実はそれぞれが自国の安定を守る必要に迫られての進出に過ぎないという消極的な背景も浮かんでくるのである。

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